本日は久し振りに本の紹介です(*≧∀≦*)
の次は、京極夏彦の「鉄鼠の檻」を読了しました。
「鉄鼠の檻」は、百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)4作目の作品です。
古書店「京極堂」の主、中禅寺秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)が、謎と妖怪に憑りつかれた登場人物たちの憑き物落としをしながら、謎を解いていく、ミステリーの世界と妖怪の世界が絶妙に融合したシリーズ。
シリーズ1作目は 「姑獲鳥の夏」
シリーズ2作目は 「魍魎の匣」
シリーズ3作目は「狂骨の夢」
オススメは順番通り読むこと。
「鉄鼠の檻」では、シリーズ1作目 「姑獲鳥の夏」の登場人物が再登場していますので、1作目から読んでいると少し感慨深い。
でも、順番通りでなくても十分楽しめます(*≧∀≦*)
「魍魎の匣」については、以前紹介していますので
そちらの記事もご参考に。
あらすじ<文庫本裏より>
レビュー
禅の世界へ
手術前から読んでいたものの、術後に読むには難しすぎて後回しにしていた京極夏彦の「鉄鼠の檻」。
禅のお坊様がたくさん出てくる為、
禅を中心とした、哲学的要素の濃い作品でした。
人の心の檻とは何か。
それを模索し続けているような小説と感じました。
一般に「禅問答」の言い方として知られる「公案」も載っていて興味深く
色々と深い作品で
そしてものすごい読み応え。
軽い読み物では満足できなくなった活字中毒の方などには特に、満足感を与えてくれると思われます。
タイトルの「鉄鼠」とは何か
なにせ禅用語の知識が一切ない私には、その独特の読み方からして四苦八苦しました。
わからない単語はその都度、読書ノートに語句の読み方&意味をメモしながら読み進め、簡単な相関図みたいなものも書き、それらを見ながらの読書。
体力も精神力も充実しているときに読むのが得策の本です。
20代の若い時に読み、30~40代に再読したかったな。
疲労しているときは、オススメしません🤣
さて、タイトルの「鉄鼠」が何かすらわからない私。
禅に精通している人のみが読む本ではないので、もちろん簡単に説明があります。
最初のページに
老賊(ろうぞく)魔魅(まみ)に入り、人天(にんてん)を脳乱(のうらん)して了(おわ)る時なしとか ―――――
という文言と、以下のような画像が掲載されています。
(※画像掲載に問題があれば連絡お願いします)
左ページの絵の中に、ひときわ大きな人の顔をしたネズミがいますね。
これが鉄鼠です。
鉄鼠は妖怪の類に分類されている模様。
鉄鼠とは、簡単に言ってしまえば
「頼豪(らいごう)という徳の高いお坊さんが変化(へんげ)したネズミの化け物」
なのです。
では、なぜ「徳の高いお坊さん」がネズミの化け物なんぞに姿を変えてしまったのか。
これについては、次のページで「園城寺戒壇事 ―――」として説明が入っています。
が、これが「太平記巻十五」の抜粋らしく、実にわかりにくい(@Д@;
こちらも頑張って調べました。
簡単にまとめると以下のようになります。
徳の高い法力(ほうりき)を持つお坊さんでした。
天台宗は当時大きくふたつの派閥に分かれていて、
三井寺(みいでら)側を通称「寺門(じもん)」・園城寺(おんじょうじ)
叡山(えいざん)側を通称「山門(さんもん)」・延暦寺(えんりゃくじ)
と呼び、この二つはとても仲が悪く500年抗争していたのです。
そんな中、時の白河天皇に皇子(男の子供)が生まれるよう、頼豪は祈祷を頼まれます。
そして見事、敦文(あつふみ)皇子が誕生。
白河天皇は頼豪に「褒美として何でも好きなものを与える」と言います。
それを受けて頼豪は、園城寺に三摩耶戒壇(さまやかいだん…戒律を授ける為の場所)を建ててくれるように頼みます。
しかし、これに山門の延暦寺が猛反対。
天台宗のどちら側にも肩入れをしたくなかった白河天皇は、
「金や名誉なら何でも与えるが、三摩耶戒壇造立だけはダメだ」
と断ったのです。
断られた 頼豪は激怒。
自ら魔道に堕ちて必ず呪うと言い放ち、怨死。
敦文皇子は亡くなり、頼豪は怪鼠(石の体の八万四千の鼠)となって襲い掛かり、延暦寺の大事な経巻を食い破ったのです。
そして、比叡の法師は鼠の社を祀ってその怒りを鎮めたとされています。
何という事でしょう。
鉄鼠、おそるべし。
徳の高いお坊様同士であっても、諍いというのは醜いものなのだという教訓なのかしら・・・?と疑問を持ちつつ、
「そんな謂れがあったのね、ふむふむ。」
という予備知識を踏まえて、
いよいよ小説が始まります。
作中でも、もちろん登場人物たちの会話によって、説明されています。
予備知識があると、より物語がわかりやすくて良いかな・・・くらいですので、私のように敢えて色々調べなくても、十分楽しんで読書できます(*≧∀≦*)
作品を通して垣間見れる色んな人生
さぁ読もう!と思い立ってから、予備知識を仕入れる為に数日を費やした私。
小説を読む前に既にちょっとした疲労感(笑)
とはいえ、犯人の動機も、殺された人の人生も、生き残った人の人生も、どれも余韻が強く、読後しばらく色々と考えさせられる、深い、読むべき本です。
犯人の動機も衝撃的でした。
「人間とは・・・」と深く考えさせられます。
殺されてしまった人も、もし生き延びていればさぞ立派な人になったであろうと悔やまれる人もいたりして、大仰にも「人生とは」と思いを馳せたり・・・。
そして何より、こんなに長い(分厚い)のに、途中ダレることなくずっと面白いってのがもう・・・すごい。圧巻です。
しばらくしたら、また再読したい。
インドアを強いられる今こそオススメですよ。
じっくり読み進めてみませんか?
マンガもありますッ!
私は電子版で読みました。
小説の内容や雰囲気を壊すことなく、上手に漫画化されていますのでオススメです。
共に読書を楽しみましょう♪