本日も読書記録(*≧∀≦*)
今回は吉村昭の「破獄」です。
昭和11年青森刑務所脱獄。
昭和17年秋田刑務所脱獄。
昭和19年網走刑務所脱獄。
昭和22年札幌刑務所脱獄。
犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。
その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。
読売文学賞受賞作。
著者 吉村昭が、実在の天才的脱獄犯白鳥由栄 ( Wikipedia)をモデルに書いた犯罪小説です。
北海道の網走刑務所に行った時に、この小説「破獄」を知りました。
(画像出典:白鳥由栄 - Wikipedia )
網走刑務所内では、人形が設置されて脱獄シーンの再現をしていました。
この人形が、当時の私には、とても印象的だったのです。
ガイドの方が、この人形(白鳥由栄)がどのように脱獄したのかを説明してくれて、この人をモデルに小説も書かれているよと教えてくれたのです。
以来、一度読んでみたい!!と思っていました。
佐久間清太郎という男
主人公は、脱獄を繰り返す佐久間清太郎という男。
舞台は激動の昭和8年~26年。
犯罪小説というジャンルになるそうですが、個人的には、戦中・戦後の社会情勢の物語だと感じました。
物語の背景には「戦争」があり、看守たちの働きや佐久間の行動、どれもが重く、濃く、胸にのしかかってきます。
物語にのめりこんで夢中で読む、というよりは、淡々と、でも 心はぞわぞわしながら読む・・・という感じです。
これからの自分の人生を思う
この小説の特徴は
「文中に会話がとても少ない」
という事が挙げられます。
人物同士の会話のやり取りや、回想などがあまりなく、地の文を中心に進んでいくので、小説というよりも何かドキュメントを読んでいるような感覚になるのです。
特に、戦時中の事柄は、起こった事とその結果を、箇条書きに淡々とつづるものであったのにもかかわらず、途中、胸が詰まってページを繰る手が止まりました。
平和な時代に生きている私は、戦争というものがピンときていなかったんだなぁと思うのと同時に、平和という日常は、この上なくありがたいことだとしみじみ感じました。
そして、読後、文庫本の表紙を見返して、ため息が出ました。
この厳しさと哀しさ。
じっと見ていると美しさすら感じる。
この本の内容を表するのに、
これ以上ない素晴らしい装丁
だなぁと、素直に感じました。
本を読む前は、この表紙に特に何の感想も抱かなかったのに。
読後は、映画のワンシーンのように見えます。
そして、「破獄」というタイトルも、この本にふさわしく、これ以外にないと思えるものでした。
結局、佐久間清太郎という男が何を考え、どういう思いでいたか・・・
それを考える時、今日これからの自分の人生を、真面目に、誠実に生きたいと感じます。